一、本データベースは、仙覚の校訂の変遷を捉えるために作成した。寛元本は神宮文庫本(宮)、文永三年本は西本願寺本(西)、文永十年本(頼直本)は近衛文庫本(『校本萬葉集』の呼称は陽明本(陽))で代表させる。
一、底本は、現在、京都大学貴重資料デジタルアーカイブ(https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/)として公開されている京都大学本(曼朱院本)(京)を用いた。
この本は文永十年書写の奥書をもち、寂印と成俊の奥書をもつ新しい系統に属するが、次点本や寛元本の内容を含んでいることから、校訂の変遷を考察する便宜を考えてあえて底本とした。
一、校合は以下の要領に従った。
(イ)神宮文庫本は、『古典資料類従 神宮文庫本万葉集』(勉誠社 1977年)を用いた。
(ロ)西本願寺本は、『西本願寺本萬葉集(普及版)』(おうふう 1993 ~96 年)を用いた。
(ハ)陽明本は、京都大学貴重資料デジタルアーカイブ(https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/)として公開されている近衛文庫本を用いた。
(ニ)校合の際、参考として『校本萬葉集』(岩波書店1931年)、『校本萬葉集 新増補』(岩波書店 1980年)を用いた。その際、陽明本と同系統の温故堂本(温)に関する記述も参照し「補足1・2」欄に掲載した。
一、「歌番号」欄には、旧『国歌大観』の番号を示す。なお、巻五の「沈痾自哀文」など歌以外の形式による独立した作品については、前後の作品のうち、より関連性が深い作品の歌番号を便宜的に示す。
一、「区分欄」の表記の略号は、以下の通りである。
「部立」部立
「部立補注」部立に関する細注
「時代標目」天皇名による時代区分
「時代標目補注」天皇名による時代区分の細注
「題詞」題詞
「題詞補注」題詞の細注
「歌」歌
「歌補注」歌の細注
「人名」歌の後ろに置かれている人名
「左注」左注(諸本の表記により「異伝」と混在する場合がある。)
「左注補注」左注の細注
「異伝」一云、或云等の歌本文に対する異伝に関する注。文字の大小は不問。
(諸本の表記により「左注」と混在する場合がある。)
「書入れ」『校本萬葉集』頭注に示された書入れの総称(次項参照)
一、「書入れ」(『校本萬葉集』頭注)の内容を以下のように分類し、「区分欄」に略号で示した。
「配列!」数首レベルの入れ替わり
「錯簡!」丁レベルの入れ替わり
「脱落!」脱落
「破損!」破損
「本文!」上記以外に本文上問題のあるもの
「用語!」語句に関する注
「伝来!」諸本の伝来に関する注
「他文献!」他の文献に見られることを示す注
「貼別!」貼紙に別筆で記された注
「人物!」本文中の人物に関する注。作者注記も含む。
「地名!」本文中の地名に関する注
「校合!」校合に関する注
「日付!」日付に関する注
一、異同が認められる部分は、「京大本」欄にて赤色とした。
一、欠字もしくは衍字が認められる場合は、「*」によって諸本間の字数を揃えた。
一、文字に異同は認められないが、注記すべき諸本間の異同が見られる場合は、「京大本」欄のみに語句を示し、「補足1・2」欄にその内容を記した。
一、文字の変換ができない場合、「〓」とし、「〓」欄にて説明を施した。同欄内で「〓」を用いた異同が二字以上認められた場合は「●」を用いた。
(例)巻二 199番歌 陽明本「虎可〓●登」
一、「補足」欄には、以下の項目について説明を加えた。
(イ)『校本萬葉集』の校異・頭注に従った場合は、そのまま「補足1」欄に記述した。
ただし、記述の分量が多い場合は、諸本間の検討結果を「補足2」欄に簡潔に示した。その内容は、以下の通りである。
「語句一致」注の語句が諸本間で一致している場合。
「語句類似」注の語句に小異がある場合。
「内容類似」注の内容はほぼ同じだが、書き方に小異がある場合。
「独立注」他の本には見られない独自の注である場合。
(ロ)『校本萬葉集』の内容が、参照した諸本と一致しない場合、また補足事項が含まれる場合は、「補足2」欄にその内容を指摘した。
(ハ)『校本萬葉集』が指摘している本文の合点は、「補足2」欄に「「漢字」の右肩に赭(色)の合点あり。」のように示した。
一、「補足」欄の記号は、以下の通りである。
/ 改行
〈 〉 小字
一、「〓」欄の表記は、以下の通りである。
(イ)偏と旁による説明
(例)「材」→木偏+「才」
(ロ)(イ)の形式によって説明できない場合、「当該本参照」とした。
(ハ)(イ)(ロ)以外に「画像」欄に示した場合がある。
一、字体に関しては、写本伝来の文字を残したものもあるが、おおむね現代通行の字体に改めた。
一、本データベースでは、各写本の字体の揺れを考慮して、「塙版テキスト」欄に『補訂版萬葉集本文篇』(塙書房 2009年3月 8刷)における当該部分の本文を記載し、検索の便宜を図った。
一、本データベースの作成にあたっては、上村茉由、佐野智美、田中美幸、山口直美、猪瀬綾子、栗橋萌の協力を得た。
一、本凡例は巻一・二・十一・十二を取り上げた試行版についてのもので、今後他の巻の本文データを増補する過程で改訂する場合がある。
(2019・2・4)